レポートの最後に、現地で頂いた資料などをアップします。
1.原発事故による避難指示区域
(2013年8月7日現在、長谷部福島県会議員資料)
原発事故直後、原発立地自治体には首相官邸から避難指示が出されましたが、
それ以外の自治体にその情報を届きませんでした。
その結果、現在も帰還困難地域に指定されている浪江町民の避難は遅れました。
20131229 避難指示区域(世帯・・世帯)をダウンロード
震災後、役場を移転せざるを得なかった9市町村
(広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯館村)の内、
もどったのは川内村、広野町の2町村だけ。
しかし、住民の大半もどらず、若い世代はまったくといっていい程もどっていない。
【避難者の状況】
① 現在、避難指示のある自治体は11自治体
楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯館村、田村市、南相馬市、川俣町
帰還困難区域 9244世帯2万4854人
居住制限区域 8447世帯2万3394人
避難指示解除準備区域 1万1239世帯3万3079人
合計 2万8930世帯8万1327人
②東京電力福島第一原発立地の双葉町、大熊町では
帰還困難区域が全人口の96~97%
③居住制限区域を含めると、
富岡町は全人口の91%、飯館村は87%、浪江町は59%
④福島県民の県内・県外避難者は14万2333人から
避難指示のある地域(上記①)を引いた6万1006人が
避難解除されたか、避難指示のない地域からの避難者。
国が「解除」を決めても、
放射性物質への懸念など、
住民は国と東京電力を信用していない状況がうかがえます。
また帰っても仕事がないと生活はできません。
【学校の状況】
① 高校
避難地域の8高校の生徒は、すべて他の市町の仮校舎で授業を受けているが、
生徒数は激減。2393人(2010年5月)から877人(2013年10月)に。
② 小中学校
双葉8市町村の11中学校中、臨時休業が3校。
生徒数は2322人(2010年度)から13.7%の319人(2013年度)に。
双葉町村17小学校中、臨時休業が7校。
生徒数は4121人(2010年度)から10.2%の421人(2013年度)に。
小・中学校とも範囲を避難地域全体に広げても激減の状況はほとんど変わらない。
小・中学生は事故前の2割以下、
高校生は4割以下となり、学校そのものの存続が危ぶまれている。
【復興住宅】
原発事故被災者のための復興公営住宅を、県は4890戸整備を目標に、
3700戸は来年度、1190戸は来年度以降の早い時期入居をめざしているとしている。
現在500戸の建設が始まったばかり。
戸数は避難者の「意向調査」に基づくとされているが
「今のところにとどまるか住宅に住むか判断できない」と回答する住民が多く、
首長からは「圧倒的に足らなくなる」と懸念の声があがっている。
帰還困難区域だけでも9244世帯いることからすれば足らないことは明らかです。
2.県外避難の状況
なお、最後まで残った埼玉県の避難所(旧県立騎西高校)は、
12月27日放送のNHK「最後の避難所」によると、閉鎖されたとのことです。
この避難所は、双葉町民の避難所で役場機能もあったところです。
若い世代が避難所から出て行く中で、
多くの高齢者が残されました。
避難所でできた新しい小さなコミュニティーが、
住民たちの心のよりどころでもあったのです。
3.震災関連死について(以下、河北新報12月19日付記事より)
東日本大震災と福島第1原発事故の避難生活の長期化などで亡くなった
福島県の震災関連死の犠牲者が
11月30日現在で1605人に上り、
津波による直接死の1603人を上回ったことが県のまとめで分かった。
県によると、避難生活の長期化でストレスが高まって命を落とすケースが目立つ。
高齢者が原発事故の混乱で適切な治療を受けられなかったり、
長距離移動を強いられ病状を悪化させたりして寿命を縮める例も多い。
関連死は岩手県が428人、
宮城県が878人と犠牲者全体の1割に満たず、
原発事故を抱える福島県が突出している。
兵庫県立大の室崎益輝防災教育センター長は
「福島県の被災者は放射能ストレスがあり、
生活再建の道筋も見えないなど固有の問題を抱える。
原発事故と関連死の因果関係を詳しく調べ、
関連死の増加に歯止めをかけるべきだ」と指摘した。
4.自殺者について
内閣府「東日本大震災に関連する自殺者数」(2013年9月分)によると、
2011年から2013年9月までの自殺者109人のうち、
福島県は39人(35.8%)、
2013年1月~9月では30人中福島県は16人(53.3%)。
原発事故が暮らし、健康、家庭などさまざまな問題を引き起こしています。
5.住民の分断・苦しみ
多くの住民が放射線量への不安とストレスの中での暮らしを余儀なくされています。
加えて、原発からの距離、放射線量、賠償、避難指示区域の内外、
地震・津波被害と原発被害との対応の違いなどが
住民の中に対立を生む要因となっています。
県内12市町村から2万4000人が避難している、
いわき市では、2012年末に「被災者帰れ」の落書きが市役所などに書かれる、
2013年正月には仮設住宅駐車場の車7台に
フロントガラスが割られる、ペンキをかけられる、
同5月末には仮設住宅に向けてロケット花火が打ち込まれる
などの事件が発生しています。
うっ積した住民感情が、同じ被災者に向けられる異常な事態です。
いわき市では「元の生活をかえせ・いわき市民訴訟」が取り組まれています。
6.レポートの最後に
東京電力福島第一原発事故による被害は、
私たちが経験した「阪神・淡路」とは、
明らかに次元の違う被害・困難を被害自治体・住民にもたらしています。
関西にいても現地のとりくみ・現状を広く発信していくことはできます。
風評被害の影響が大きい農産物・地場商品の物産展で支援することもできます。
条件を整えて現地に足を運ぶことも大事です。
そうした一つひとつの取り組みが
政治を変えていくことにもつながるのではないでしょうか。
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