1月17日午後、神戸市勤労会館で「東日本大震災被災地と結ぶ 阪神・淡路大震災17年メモリアル集会」が開かれました(1月5日ブログ紹介)。
主催は阪神・淡路大震災救援・復興兵庫県民会議、後援は災害被害者支援と災害対策改善を求める全国連絡会です。
各種報告の内、東北3県からの報告で印象に残った点を紹介します。
【東日本大震災つなみ・救援・復興岩手県民会議 鈴木露通事務局長(いわて労連議長)】
*6月から11月で、震災関連で自ら命を絶った人が13人、仮設住宅での「孤独死」も生まれている。
*「県民会議」の今後の活動は、四つの分野(医、職、住、学)を基本に取り組んでいく
1.医療問題
知事選挙後、知事は被災地の三県立病院(高田病院、大槌病院、山田病院)について「再建を基本としつつ」と言明した。
これは、選挙を通じて私たちが掲げた公約を実現させた成果だ。
気仙医療圏で中核となっている県立大船渡病院では、被災前より外来患者が大幅に減っている。
その要因としてバスによる足の確保が指摘されており、受診抑制による重症化が心配だ。
県立病院とともに、被災地の沿岸12市町村における民間診療所(被災した診療所52、歯科診療所60、薬局52)の再開に向けた支援の充実が求められる。
2.仕事・生業の職の問題
三陸沿岸の基幹産業である漁業と水産加工業などの基盤回復が重要。
111の漁港の内、108港が壊滅、1万4千隻の漁船の9割が流出。
県では漁船6800隻を確保する予算を盛り込んだが、建造が追いつかず、9月末で1023隻に留まっている。
震災後の離職票・休業票交付件数は38726件(内、沿岸部の交付件数は14462件)、雇用保険受給資格決定者数は23259人(内、沿岸部の決定者数は11493人)。
県は「雇用創出事業」を創設したが、被災者の雇用と生活関連はいっそう深刻になると予想される。
そうした中で、2重ローンを解消し、せめて0からのスタートをめざす運動が力になっている。
3.住宅の問題
被災者約6.4万人の半分が、応急仮設住宅等へ入居している。
その内訳は、応急仮設住宅 13184戸(31728人)、民間賃貸住宅3363戸(8636人)、雇用促進住宅816戸(2530人)、公営住宅等174戸(512人)の合計17538戸(43406人)。
地元新聞の被災者アンケートで「今後の生活に不安を感じること」は、「住宅の確保」が23.6%で最多。
県の被災者アンケートでの住宅政策では、「持家の取得や再建に対する支援」が最も多く64%である一方、重複回答として「公営住宅の建設促進」も30.5%となっている。
県は国に「被災者生活再建支援制度」(最高300万円限度)の拡充を要請し、住宅ローンへの利子補給を行う予算を計上した。
4.学・教育問題
県教委は、子どものケアに役立てるため、「心とからだの健康観察」アンケートを2018年まで実施する。
被災孤児(93人)、被災遺児(476人)の実態把握などの支援を行う。
一方では震災を口実とした学校の統廃合問題も出ている。
【東日本大震災復旧・復興みやぎ県民センター 菊池修事務局長(弁護士)】
*宮城県の現状
中央に丸投げして作られた仮設住宅の寒さ対策は、岩手、福島に比べて遅れが際立っている。
厚労省通知にもかかわらず生活保護世帯が義援金を受け取ると収集認定されて保護は打ち切られている。
県が放射能測定をしないため、親は子どもたちの健康に不安を抱え、農林業や観光産業の従事者はセシウム汚染、風評被害に苦しんでいる。
宮城県の復旧・復興、被災者の生活再建の遅れは著しい。
県の行なっていることは、仮説住宅のプレハブ協会への丸投げ、がれき処理の大手ゼネコンへの一括発注、仙台空港アクセス鉄道復旧工事への巨額の資金貸与、「夢メッセみやぎ」復旧工事への資金投与など。
まさに、大企業奉仕、ハコモノ復興行政であり、被災者の生活再建という観点はない。
*なぜか?その答えは宮城県震災復興計画にある。
同計画の基本理念は、「3月11日以前の状態へ回復するという『復旧』だけにとどまらず、?『再構築』することにより、県勢の発展を見据えた最適な基盤づくりをはかっていく」というもの。
「最構築」の中身は、水産業での「水産特区構想」・漁港3分の1集約化、農業での集約化・大規模化、まちづくりでの高台移転・職住分離、製造業での「富県宮城」構想、被災三県広域復興機構構想、被災者・被災家族を遺伝子研究対象にする「メディカルメガバンク」構想などである。
財界が提唱し、TPPに道を開き、製薬企業に巨額の利益をもたらすもの。
「単なる復旧にとどまらない再構築」とのキーワードは、阪神・淡路の時の「単なる復旧ではなく創造的復興」のスローガンと同じである。
その特異性は県の復興会議が、野村総研と三菱総研が手を組んで計画を策定する委員構成になっており、地元の利益代表は0である。
県の復興計画は、財界が求める構造改革を、震災を奇貨として宮城県で実現しようとするもの。
*復旧・復興は日本国憲法にもとづく被災者の権利
被災地・被災者が主人公の復旧復興をめざしていくために、憲法前文、13条、22条、29条、25条などにもとづく複合的な権利であるとの観点が重要である。
財産権、営業権の基本は、前文、幸福追求権(13条)であり、政策的制約になじまないものである。
【東日本大震災・原発事故被害の救援・復興をめざす福島県共同センター 斉藤和衛氏(福島県民医連事務局長)】
*原発事故の発生と避難
3月11日午後9時23分に2キロ圏外退避・10キロ屋内退避、12日午前5時44分に10キロ退避、午後6時25分に20キロ退避と連続して行われた。
20キロ圏内には病院7、グループホーム5、障害者施設5、老健3、特養6があり、バスやトラックに乗せられ、行き先もわからず、医療スタッフも不十分なまま転送された。
20キロ?30キロ圏内には病院6、グループホーム4、障害者施設3、老健3、特養8などの施設が、ベッド制限・実質的な避難命令があり、自らのつてで転院先をさがなさければならなかった。
故郷を離れた人は12市町村で10万数千人、避難者総数では15万人にのぼる。
*放射線の健康への影響
放射能の健康への影響を考え、県外への避難者総数は12月に6万人を超えた。
ホールボディカウンターによる計測要望は非常に大きいが県、市町村あわせてもまだ10台にも至らず、県民の不安に応える状態には到底ない。
*損害の全面賠償を勝ち取るために
東電は、「人災」であることを認めず、「賠償」ではなく補償と言い、補償の枠組みの中で、額を最小限にとどめる方針だ。
知事を会長にすえる「対策協議会」が発足し、全県民、全業種、風評、精神的な苦痛を含む全面賠償を求めてきた。
成果を上がっているが、請求書は受理されるも支払いは大幅に遅れている。
紛争審査会の基準を上回る賠償基準をつくりだすために、住民請求を県自らが支援したり、弁護団も5つ以上編成され本格的な請求を始めるところまでこぎつけた。
*全国のみなさんへのお願い
①安心して暮らせる日本を作るため、原発なくせの運動を大きく広げること
②放射線について正しく理解し、徹底した除染・全面賠償を求める福島県への理解
③全国に避難している福島県民の生活、医療・介護の支援
④自治体の機能をはじめ日常生活を支える機能が崩壊した9町村への全面的な支援
⑤放射線に立ち向かい働き、暮らしと地域を守る教育、医療・介護、その他のあらゆる産業への支援
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