23日午後、「どうする?米軍基地問題 ‐日米安保の是非を超えて‐」という刺激的な講座がありました。
安保反対で普天間基地問題撤去を訴え活動し、2010年沖縄県知事選挙に出馬し善戦しました。
もう一人は、安保堅持の立場で米軍基地撤去を論じる柳澤協二さん。
防衛研究所所長などを経て2004年から2009年まで官房副長官補(安全保障・危機管理担当)を務め、日本の安保・防衛政策を仕切る官僚トップにいた方です。
コーディネーターは、神戸女学院大学の石川康宏教授。
主催は、兵庫県保険医協会、兵庫県民主医療機関連合会です。
お二人のお話とフロアーからの質問への考えから、いくつか印象に残ったものです。
まず、名刺に「捲土重来を期している」と記している伊波洋一さん
アメリカで普天間基地が学校や住宅地の真ん中にあることを伝えると、彼らの反応は「誰が住宅の建設を許可したのか」というものだ。
その危険性は、ラムズフェルドが基地を実際に見て、「危険でありすぐに閉鎖しなければならない」と語ったほどである。
しかし、基地には日本の航空法の適用を受けることもなく、年間3万回にも及ぶ訓練が行われている。
日本とアメリカは2000年9月に「環境原則に関する共同発表」をしている。
「日米両政府の共通の目的は、施設及び区域に隣接する地域住民並びに在日米軍関係者及びその家族の健康及び安全を確保することである」
「環境保護及び安全のための在日米軍による取り組みは、日米の関連法令のうちより厳しい基準を選択するとの基本的考えの下で作成されている「日本環境管理基準」に従って行われる。その結果、在日米軍の環境基準は、一般的に、日本の関連法令上の基準を満たし又は上回るものとなる」
しかし、米軍は守ろうとしないし、日本政府は守らせようとしていない。
「日本環境管理基準」そのものも実施されて15年になろうとするが、政府は翻訳すらしていない。
宜野湾市の質問に対する、米太平洋海兵隊司令官の回答(2006年12月19日)は、「私が指揮するすべての部隊は、安全な運用を確保するために法律や運用基準を厳格に遵守していることを私が保証する」というものだった。
また、普天間基地は、障害物を排除し離発着の際の安全を確保するために本来設けられなければならない「クリアゾーン」(滑走路から900m)内に、3600人の住民が居住している。
この問題に対する、外務省の公式見解は「アメリカの基準にすぎない」というものだ。
沖縄、グアムのたたかいがアメリカ政府を動かしつつある。
政府をアメリカのかいらい政権からの脱出させていくために、地域からの運動が重要だ。
ついで、「脱・同盟時代‐総理官邸でイラクの自衛隊を統括した男の自省と対話」の編著もある、棚沢協二さん
「政権を支える」義務、やりがいを感じ、難題に立ち向かっていく、その中で国益にとってプラスなのか、マイナスなのかは考えることはなかった。
現場にいておかしいと思ったことはあっても、日米同盟維持が最大の国益と信じていた。
しかし今、日米同盟だけに頼っていては、日本の外交は成り立たないと考えている。
それが、日本の利益になったのか、よかったのか、検証していていきたい。
不条理な沖縄の基地問題の解決に向けて、アメリカときちんと話ができないところに、この国の政治に最大の問題がある。
政府が普天間基地移設の際に持ち出す、キーワードは2つある。
一つは「抑止力」。
そもそも、抑止力とは、恐怖を与えることで相手の行動を抑えるという考えだ。
しかし、アメリカの最大のドル保有国(債権国)である中国は、冷戦時代の米ソとは明らかに違う関係である。
同じ方向にむかって競争をしているという考え方もできる。
脅威でもない相手に、抑止力と言う考えは成り立たない。
もう一つは「国際公共財」。
アメリカには、もう海外に向かって大きな力を使うことはできない。
アフガン、イラクの無謀な戦争をした結果である。
事実、リビアにおいて一番力を投入したのはフランスだった。
日本は、アメリカとの関係を強めていく、そして国連常任理事国入りもとの思惑もあったが、アメリカと同調してきた結果、政治的財産は何も残らなかった、その思惑は破綻した。
日本がイラク戦争を支持したことについて、戦略的な議論をした形跡は何もない。
日米同盟維持がその理由であった。
何のために、沖縄に基地が必要なのか。
冷戦時代が終わっているにも関わらず、いつまでもその認識で今の時代を考えてしまっている。
東日本大震災被災地の状況も、テレビで見るのと現地に行って見るのとでは大きな違いがある。
基地問題についても、現地に行く中で認識が大きく変わっていく。
政治もぶれずにやっていくことが大事だと考える。
その結果、間違ったら変えればいい。
中途半端な政治を続けていては、いつまでも変えることはできない。
お二人には、同じベクトルを向いている意見あり、異なる見解もありました。
大事なのは、その立場の違いをきちんと認識して、意見を交わすということです。
石川康宏さんのまとめからです。
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