地方紙各社の社説・報道記事からの抜粋です。
◇北海道新聞 変節した首相の責任重大
消費税増税は民主党の2009年衆院選マニフェスト(政権公約)になかった政策。野田佳彦首相はこれを実施へとかじを切り、実現のために自民党と手を組んだ。一方で国民に約束した政策は次々と棚上げ。自民党政治からの変化を求め民主党に政権を託した有権者には想像もつかなかったことだろう。民意を軽視した背信行為だ。政権交代の大義を曲げて増税に突き進む首相の責任は極めて重い。
◇東奥日報 国民の理解得られていない
世論調査をみるとなぜ今消費税増税なのか、国民の理解を十分得られていない。野田政権と3党は参院審議を通じ国民に説明を尽くす必要がある。
◇秋田魁新報 増税だけの先行、理解得られない
将来世代の負担軽減や社会保障制度維持のために消費税増税が必要だとしても、デフレ下での増税では税収が上がらず、景気への影響も懸念される。一体改革法案自体も民自公3党だけの協議で修正されたもので、肝心の社会保障分野では多くの懸案が先送りされ、全体像は曖味なままだ。一体改革が不完全なのに、増税だけが先行するのでは国民の理解は得られない。
◇岩手日報 増税の先行はおかしい
あのときの自民党の立場が今の民主党だ。有権者はマニフェストを信じて投票したのに、政党が次第に変質していく。政権交代後の3年間は国民の期待を裏切ったという印象が強い。…社会保障を先送りにして消費税増税が先行したことはやはりおかしい。徹底した議論を求めたい。
◇信濃毎日 公約の重みの検証を
首相は消費税増税が09年の公約になかったことを国会で謝罪している。民主党政権は、今度もまた公約をめぐるトラブルで分裂含みに陥ったといえる。政党の生命である公約の重みを検証しないかぎり、党の再生はあり得ない。東日本大震災で30万人を超える人々が避難生活を続けている。首相は政策の優先順位を間違えていないだろうか。いま消費税増税に政治生命を懸けると言われても、理解は得られない。
◇中日新聞 政権選択のにがい教訓
2009年衆院選で、消費税は増税しないと公約して政権交代を実現した民主党議員が、敵対していた自民、公明両党と結託して消費税率引き上げ法案に賛成する。自民党とは違う脱官僚や政治主導、税金の無駄遺いを徹底的になくすことで「コンクリートから人へ」の政治実現を期待した有権者の民意は完全に踏みにじられた。
◇福井新聞 襟をただして国民の信を問え
増税の前提とした「身を切る改革」の議員定数や公務員総人件費の削減は審議が進まず、飛行機やJRの無料パスなど国会議員の「特典」も手付かずのまま。実効性ある経済再生策も示せない。どうして増税だけが「待ったなし」なのか説得力がなく、「増税に政治生命を懸ける」と批判されても仕方がない。
◇京都新聞 一体改革と言えない
一体改革は財政健全化と持続可能な社会保障制度の両立が目的だ。消費増税は課題の半分に過ぎぬことを忘れてはならない。民主党がマニフェス卜に掲げた最低保障年金の創設と後期高齢者医療制度の廃止などの抜本的な社会保障改革は、国会議員と有識者で設ける国民会議で1年かけて検討するとして先送りされた。とても一体改革の名に値するやり方とはいえない。
◇神戸新聞 社会保障先送り
だが民主党がマニフェストに掲げた最低保障年金制度の創設や後期高齢者医療制度廃止は、今後発足する「国民会議」に議論を託す。先送りである。社会保障の将来像が明確に示されないまま、増税が決まった。一歩踏み出したが、国民にとって納得しにくい形だ。
◇山陽新聞 これで一体改革と呼べるか
3党による修正協議の結果は、問題先送りが目立つ。民主党の目玉政策だつた最低保障年金制度の創設などは棚上げされた。新たにつくる「国民会議」に委ねることになり、消費税増税だけが舞行する形になった。これで一体改革と呼べるのか。
◇高知新聞 民意とのずれ埋まらず
最近の調査では増税反対派が賛成派を上回り、増税関連法案は今国会で採決しなくともよい、との慎重論が多数を占めていた。…早期の衆院解散0総選挙を求める意見も増えており、延長国会の野田政権は、対野党ばかりでなく、民意とどう向き合うかも問われる。
◇愛媛新聞 国民の信を問うべき時が来た
消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法案がきのう、衆院本会議で採決され、民主、自民、公明3党などの賛成多数で可決された。理念置き去りの「増税ありき」の法案を、国民の理解も十分に得ないまま通過させ、成立を企図するのは暴挙と言うほかない。
◇宮崎日日 原点は税制の見直し
税制改正では、低所得者ほど負担感が重くなる逆進性の対策は今後の論議に委ねられた。再分配機能を強化する富裕層への所得・相続税の増むも見送られた。社会保障分野でも、今後の公的年金や高齢者医療制度は、新設する「国民会議」での議論に棚上げされた。新制度を検討するのか、現行制度の手直しなのか。民主党と自公両党の主張は食い違つたままである。また低所得者への年金加算など機能強化策は政府案から後退した。
◇佐賀新聞 政権交代は何だつたのか
ついに民主党が事実上の分裂状態に入つた。国民から大きな期待を集めた政権交代から2年9カ月。この間、民主党政権は何をなし得たのだろうか。マニフェストとして高らかに掲げた政策は次々に崩れ、最後にはマニフェストには一言もなかった消費税増税だけが残ったのではなかつたか。
◇熊本日日 けじめ示せ
1997年以来となる消費税の大型増税の審議が参院に移る一方、社会保障制度改革や増税に伴う低所得者対策など多くの課題は積み残された。国民に痛みを強いる増税だけが先行してしまうようでは、国民の理解は得られまい。参院審議では、先送りされた課題をきちんと詰め、着実な実行を求めたい。…修正合意した3党の連携が崩れなければ、一体改革関連法案は7~ 8月には成立の見通しだ。しかし、なぜ今、消費税増税なのか、世論調査を見る限り国民が十分納得しているとは言えないだろう。疑間に答えるためにも、審議を尽くす一方で丁寧な説明を心掛けてほしい。
◇南日本新聞 逆進性解消が重要だ
消費税は高所得者ほど税率が高くなる所得税と比べると、所得の少ない人にも同じ税率がかかるため、低所得者ほど相対的に負担が重くなる。この「逆進性」の問題を解決することが何より重要だ。
◇琉球新報 国民に信を問うべき
2009年の総選挙の際、民主党は消費税を上げないと訴えた。政権公約のどこにも、増税は掲げていない。それで政権を取つたのに増税するのでは、民主主義的正当性を欠く。野田佳彦首相は直ちに衆院を解散し、国民に信を問うべきだ。
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