今年は、すべての国民が医療保険制度に加入できる、国民皆保険制度ができて50年になります。
1961年に、国民健康保険法の全面改正で、農民や中小業者も加入できるよう全国の自治体で国民健康保険制度がはじまり、国民皆保険制度がはじまりました。
国民健康保険法第1条は「社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的」と定められています。
最近、年配の方から、「自分が若い頃に“国民皆保険制度”ができて随分喜んだものだ。しかし今は…」と指摘されるとおりの事態が進行しています。
今年3月全日本民医連は、「2010年国民健康保険など死亡事例調査」(第5回)を発表しています。
その中で、「もはや『国民皆保険制度』とはいえないのではないか。世界に誇るべき皆保険制度は、すでに崩壊しているとの認識に立つ必要があるのではないか」と指摘しました。
そして、2010年の「経済的事由による手遅れ死亡」集約で、71人の事例を告発しました。
「最年少32歳、無保険。重症の喘息のため高校中退後定職につけず、非正規雇用を繰り返す。両親も離婚、2ヶ月余りのネットカフェ生活ののち、生活保護受給者の父親のところに転がり込む。病状が悪化し救急搬送、糖尿病性意識障害と診断。緊急入院し10日後敗血症で死亡」
このような事例が数多く報告されています。
以下は、同報告書からのデータです。
・「いずれの公的制度にも加入していない」雇用者は、11.2%、非正規では13.8%。(2010年12月労働政策研究所の速報値)。これは雇用保険、失業保険、医療保険の「いずれにも加入していない」という数値であり、医療保険に限っていえばさらにこの割合は高くなると考えられる。
・国保への国庫負担は1984年の49.8%から2007年には25%に。保険料(税)収納率は2009年度には88%と国民皆保険制度になって以来最低を更新。滞納世帯は436万世帯(20.6%)、短期証交付128万世帯(6.1%)、資格証は30万世帯(1.5%)。
・下がり続ける国保料(税)滞納者対策のため、行政がとった対策は滞納処分の強化だった。預貯金の差押え、インタネット公売、徴収専門員家の派遣など差押えは年々増加しており、2009年度では18万2583世帯644億円にのぼっている。過酷な行政対応の中で、見捨てられるいのちが生まれている。
「税と社会保障の一体改革」は、国民のいのちと健康をいっそう危うくするものです。
運動で切り開いた成果を広めていく取り組みの強化が求められています。
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