10月6日~8日、「被災者本位の復旧・復興をめざして」「全国交流集会2012inみやぎ」が開催されています。
参加者からの現地リポート③です。
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岡田知弘 京都大学大学院教授
講演「東日本大震災復興をめぐる二つの道~『惨事便乗型』復興から『人間の復興へ』~」
講演で特に印象に残った3点です。
1.阪神・淡路大震災「創造的復興」の歴史的教訓
○新空港、湾岸高速道路、都市再開発事業等のハード整備優先と17年以上たっても「7割復興」という現実。住宅再建、商店街、中小企業の再建が遅れた。
○14兆円を超す復興市場の9割を域外資本が受注した。その問題について、「兵庫県10年検証委員会」の文書では、「地元発注率が高ければもっと復旧・復興は早まったはず」「平時から地域産業を育成しておくことが重要。それによって防災効果が高まる」との指摘もしている。
○600人を超える仮設住宅での孤独死。復興住宅を入れて17年で950人が孤独死。
○「創造的復興」路線では、被災地の復興を妨げ、被災者の生活再建、地域経済の再生にはつながらない。被災地域ガの大企業が多額の「復興利得」を得るだけ。
○今回の東日本大震災では、官民あわせて30兆円といわれる市場をめぐって外国資本も含めた資本が「復興利得」を得ようとしている。→「惨事便乗型資本主義」(ショック・ドクトリン)
2.「『被災地』は『東北』」は、間違った議論を生み出す恐れがある
政府の復興構想会議、経団連、経済同友会の諸提言は、「被災地」=「東北」論を展開している。
しかし、被災地は北海道から三重県までの18都道県にまたがっている。
人的被害が集中したのは宮城、岩手、福島の3県で、決して「東北6県」ではない。
しかも、激甚3県の中でも、三陸海岸~浜通り地域の特定の基礎自治体に集中している。
同じ基礎自治体の中でも、住民の生活領域である「昭和旧村」に焦点をあてると、
災害の現れ方が大きく異なる。
基礎自治体が、住民の声を尊重しながら、
小学校区単位でのきめ細かい被災者の生活再建、被災地復興しなければならない根拠がここにある。
決して「被災地」‐「東北」というものではない。
なぜ、被災地=「東北」論が台頭したのか。
ひとつは経済的過程の問題。
東京等に本社機能を持つ自動車、IT家電メーカーの
グローバルな空間規模での企業活動からみた調達問題としての認識がある。
内陸部の生産工場が被災し、インフラの整備が急がれるという財界の要請がある。
そこには被災地の産業と生活の再生支視点が欠落している。
もう一つは政治的過程の問題。
民主党政権になって少し弱まった道州制論、TPP導入論の推進・再開圧力の高まりだ。
そのことは「格差の広がり」となって現れている。
「内陸部においては、世界的な需要が低迷している電子部品・デバイスで全国と同様に生産が弱含んでいるものの、電子機械工業や情報通信機械工業などで順調に生産が回復している。これらを踏まえると、被災3県の生産は浸水域では依然として低迷している一方、内陸部では比較的堅調に推移しているとまとめられる」(「経済財政白書2012年版」)
3.「震災復興基本条例」の提案
○自治体の復興政策の基本理念の最優先課題にひとり一人の被災者の「人間らしい生活の復興」(生存権の保障、生活再建)を掲げる。
○上記規定に基づき、復興計画とその運用の仕方を被災者本位にコントロールする条項を揃える。
○復興にあたって自治体、大企業、中小企業、地元経済主体、あるいは医療機関、学校、そして住民の役割を明記する。
○自治体の役割、大企業の役割を規定するにあたって、地域内経済循環を基本目標に掲げる。
○自治体の契約のあり方として、公契約条例の基本項目(自治体が定める最低の賃金、再生産費、地域貢献)を入れる。
○進行チェックのため、住民代表が参加する会議体をおき、そこで毎年度進捗状況をチェックし、改善する条項を入れる。
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